最近の犬の育て方は、「褒めて育てる」が一般化されており犬を飼われた方々もまずはその方法を実践するところから始められている方が増えています。
その流れ自体は歓迎すべきことで、私が子供の頃見かけた体罰を行う近所のおっちゃんを最近ではほとんどみかけなくなっています。(体罰=叱ることではありません。)
ですが、この「褒める」ことを拡大解釈して犬を全く叱らない方、または飼い主は叱っているつもりでも、その方法がやさしく叱っているうちに入らないケース(または、逆効果なことをしている。)が多く見受けられます。
私の今までの経験から申し上げると、一般家庭でワンコを育てる場合叱らないですくすくと育てることは難しいと考えています。
犬に対する知識の多くは欧米から入ってきています。当然、褒めて育てる考え方もそれらの国々からやってきているわけですが、一般的なイメージとして日本人よりオーバージェスチャーな欧米人が全身を使いワンコを常に褒めている姿を想像しませんか?そのイメージは、間違ってはなく全般的に日本人より褒めることが上手だと言えますが、一方叱る時もかなりのド迫力です。周りで見ている私たちもまるで叱られているような感覚に捉われ背筋が伸びるような緊張感が漂います。
たまに、しつけ教室で「叱ると嫌われないのですか?」と言った質問を受けます。その回答としてよく例に出すのがデート中のカップルです。ある場面で無言が続いたとき、男性は「何かしゃべらないと面白くない人と思われてしまう。何かしゃべらないと…。」と必死に会話をみつけようとしていたとします。一方女性は「この人つまらない!!何か面白いことの一つや二つしゃべってよ。」と考えていたとします。その時点でどちらが精神上優位に立っているかおわかりですよね?「この子に嫌われたくない!!」とワンコに対して思うあまり、ワンコの要望に対して何でも応えてあげる。その一つが叱らないことだったりします。ワンコは、そのあたりの心理をしっかりと読み取りますので飼い主をいいように利用してわがまま放題好き勝手なことばかりして、結局手に負えず相談に来られる方もいらっしゃいます。
私の教室でパピーパーティー(1歳以下)とジュニアパーティー(1歳以上)がございますが実際来られる方の深刻度が全く違います。パピーに来られる方で悩みはあるものの、それ程困っているわけでもなく参考までに聞いておきたいと思われている方が多いのですが、ジュニアに来られる方はよりリアルに生活にも支障をきたしすぐにでも良くしたいと考えている方が多いのが特徴です。では、そのジュニアに参加いただくワンコは皆生まれながら問題児だったのでしょうか?決してそうではなく、そのジュニアの参加者たちはみな一様に「子犬の頃は良い子だったんです。」とおっしゃいます。つまり、良い子だったワンコを叱らず(または叱っているうちに入らない叱り方。)、甘やかして育てることでわがままになり手に負えなくなってしまった結果だと言えます。
「甘やかして育てて何が悪い」と反論を受けそうですが、確かにその通りワンコの育て方は法律で決められているわけではないので育て方は自由です。ですが、甘やかして、わがままに育てた結果ワンコを「手放す(捨てる)。」「他人(犬)に危害を加える。」「ワンコの命を落とす。」といった事実も数多く存在します。
実際、「ワンコの命を落とす。」ケースは多く私のお客様でもいらっしゃいます。多いパターンが、玄関を開けたとたん飛び出していき車にひかれてしまうといった不幸な出来事です。その飼い主は「勝手な行動をすれば叱ってでもやめさせることをしていれば・・・。」と自責の念に駆られながら過ごしています。
できることなら叱らずに育てたいところですが、ワンコと共に暮らす数十年を考えた時にこの様な状況に置かれることは十分に考えられます。その時、叱ってでも我が子の命を守る責任が飼い主にはあるということを忘れずにいることが重要ではないでしょうか。次回に続く・・・。